〈連載第三回〉 みんなで理解をもってドールセラピーの楽しみいろいろ
代表著書「心を活かすドールセラピー」を手がける、現(有)ウェル・プラネットの代 表取締役である芦澤 隆子先生の連載記事 第三弾です。
「たあたん」は来たけれど…共感から始まったDTアセスメント
「たあたん」は来たけれど、さてどうしたらいいの…?そんな声をよくお聞きします。ご入居、ご利用者の方に、最初なんて声をかけたらいいのだろう?嫌がられたらどうしよう。人形と分かっておられるのか、ホントに赤ちゃんと思っておられるのか…どう判断したらいいのでしょう?と迷っておられるのです。2つの施設での導入事例をご紹介しましょう。
ある特別養護老人ホームでは、夜のミーティングでドールセラピーについて話し合うことにしました。一人のスタッフが「Aさんは、今日はどうも不安定なので一緒に…」とAさんと手をつないでやってきました。届いてから数日、箱の中で眠っていた「たあたん」がおもむろに引き出されました。
「ドールセラピーをどんな風に始めるか」と話し合う間もなく、「たあたん」はその“不安定な方”の手に。まじまじと顔を見つめ、ほっぺ、手、おなか…と触れているAさんの口元に、かすかに微笑が浮かびました。抱き方も服やよだれかけをととのえる手つきもお母さんの優しさです。「Aさんのこんな表情を見たのは初めて」とスタッフも目を見張ったのです。
それからすっかり「たあたん」のお母さんになったAさんですが、時々「たあたん」に話しかけながら涙を流されます。スタッフは、その“涙のわけ”を知らなければAさんとの気持ちが通い合わないことに気がつきました。Aさんの涙に共感したいと思い、Aさんのライフビュー(生きてこられた背景など)を振り返る機会を持つことにしました。これがダイバージョナルセラピーの“アセスメント”の始まりなのです。
「お手紙」が功を奏したドールセラピー・スタート作戦
そのグループホームで、ドールセラピーを導入してみようと考えたのは入居者さんへの対応を色々と模索していたところ、「ダイバージョナルセラピー」を知り、この考え方をどういった形で入居者さんへアプローチするかについて考えていたところ、グラファージと出会ったのがきっかけでした。
まず「ケア研究会」を発足させて、導入の目的や留意点などを話し合い、検討を進めていく中で、ご家族の理解が必要だということになりました。それも対象者の家族だけでなく、来所される方皆さんがあたたかく見守ってくださる雰囲気が不可欠だということです。
「ご本人が赤ちゃんを愛する気持ちでおられても、周囲の方が“なぜ人形を?”と奇異の目で見られたらその方の気持ちを傷つけてしまうかもしれない」と話し合った結果、ご家族全員にお手紙を出すことにしました。ドールセラピーの資料も添えて、「導入に当たっては、他のご入居者やご家族、スタッフ皆の協力が必要となります。現実の乳幼児への対応と同様に接していただくことが重要で、ご入居者の認識する世界が現実ではなくても否定せず、そこに表される感情や行動の本質を理解し共有することが大変重要なのです。このようなセラピーが万 能ではないことを認識した上で、適合する方へは積極的に考えてまいりますので、ご協力をお願いいたします。(一部抜粋)」というものでした。真摯な言葉の中にドールセラピーの、いえ、高齢者ケアの真髄を言い得て心に訴えるものがありました。
芦澤 隆子プロフィール
(有)ウェル・プラネット代表取締役。平成2年より福祉関係の取材や著名人インタビューを多数経験し、これを機に高齢者問題に取り組む。オーストラリアとの交流も広く、現在、オーストラリア・クイーンズランド州ダイバーショナルセラピー協会準会員。また、NPO法人「日本ダイバーショナセラピー協会」専務理事として、日本のダイバーショナルセラピー普及に取り組んでいる。その一環としてドールセラピー人形「たぁたん」を考案、商品化、この秋「NEWたぁたん」が誕生。代表著書は「心を活かすドールセラピー」

芦澤 隆子プロフィール