〈連載第1回〉 低栄養の予防
介護保険の改定に伴う虚弱老人の自立支援を目的とする新予防給付の3本柱の1つが低栄養の予防である。栄養状態の如何は疾病のみではなく老化の速度に大きな影響を与える。低栄養の進行は、ときとして老化そのものの進行のようにみえるものである。加齢にともない、20歳代から筋肉や骨は減少していく。体脂肪は一定の年齢まで増えるが、ほんとうに老化すると、これも減少してくる。これらの加齢変化は老化ともにいえるし低栄養化ともいえるのである。
点滴や血管栄養などの手立てを受けている人を除き、低栄養を予防するためには毎日口から入ってくる食事をより豊かにするために毎日が口から入ってくる食事をより豊かにすることである。まず、ここで、低栄養のサインあるいはその原因についてまとめてみる 。
低栄養のサインと原因
1) うつ状態があると食欲が低下する。認知症の場合にも末期には食欲が低下する。
2) 体重が1ヶ月に1.5kg以上、あるいは、6ヶ月に3kg以上、食事や運動量が変わらないのにやせてくる。
3) 血中のコレステロールの値が、160mg/dl未満になっている。
4) 血清のアルブミンという栄養の指標となる蛋白質が4.0g/dl未満となる。
5) 口腔機能の悪化、咽喉の状態の障害などにより嚥下障害が発生する 。
6) 経済的、社会的要因
高齢者の低栄養は日本と比較して栄養過剰といわれているアメリカの方に何倍も多い。その要因の1つは、6)であげた社会的要因である。日常生活動作能力(ADL)が低下し車の運転ができなくなるとアメリカの高齢者はマーケットにアクセスできないのである。もちろん経済力の個人差も大きい。
低栄養の予防の手立ては対象の生活機 能のレベルにより大きく2つに分かられている。1つは、障害のある高齢者に対する手立て、いま一つは自立して自分で調理をしている高齢者に対する手立てである 。
障害のある高齢者は、施設であれ在宅であれ、かなり理想にかなった食事が供されていることが多く、これを如何に残さず食べてもらい、消化吸収を円滑にすることが先決である。
自立して自分で調理をしている高齢者には食と栄養に関する徹底した啓発・教育が先決である。筆者たちは、この双方の手立てを行ってきているが、詳しいことは次回から3回にわたって述べるつもりである。
桜美林大学大学院国際学研究科 老年学専攻教授 柴田 博 先生
お茶の水ケアサービス学院主催 介護予防運動指導員養成講座でも講義をされています 。

